奈良大和路の歴史文化に触れる

西の京


散策コース<徒歩約4km>
西大寺駅…西大寺…喜光寺…垂仁(すいにん)天皇陵…唐招提寺…薬師寺…西ノ京駅

平城京の右京にあたり、京の東端にある東大寺、興福寺などと呼応するように西大寺、唐招提寺、薬師寺が南北に並びたつ。天平文化のふくいくたる香りにひたるコースであり、昔ながらの集落や田園、古墳など奈良らしいのどかさをも楽しむ道である。
コース中ほどにある垂仁天皇陵は全長227mの巨大な前方後円墳で満々と水をたたえた堀に緑が影をおとして美しい。堀には田道間守(たじまもり)の墓と伝わる丸い小島が浮かんでいる。西の京の集落はもの懐かしい風情をただよわせるが、ことに唐招提寺と薬師寺を結ぶ道がいい。古びた低い土塀と老松が、長い時の流れを語ってくれる。
奈良市のハイキングコース歴史の道


天平の暮らしのひとコマ

西ノ京駅の南西に勝間田(かつまた)池(大池)がある。カメラ好きには外せないシャッターポイントだ。池を前景に薬師寺の東西両塔、遠景に若草山、春日山を配したおなじみの構図はこの池のほとりで撮影されたもの。万葉ファンも必見である。

「勝間田の池はわれ知る蓮(はちす)なし然(しか)言ふ君が髭なきごとし」 16―3835

作者不詳だが有名な万葉歌のひとつ。注釈によると新田部(にいたべ)親王が恋人のもとを訪れ、勝間田池に咲く蓮の美しさをほめちぎった。これに対して当の恋人が答えたのがこの歌。「池はよく知っているけれど蓮なんてないでしょ。そういうあなたに髭がないように」。これは恋する男女の言葉の遊び。親王は蓮(れん)にかけて恋(れん)を熱っぽく語り、彼女は親王の想いをよく分かっていて「蓮なんてないでしょ」とからかったわけ。おまけに親王は髭がないどころかモジャモジャのヒゲ面だったという。古代の男女のたたずまいをしのばせる1首である。こんな女性もいた。

「西の市にただひとり出(い)でて目並べず買ひてし絹の商(あき)じこりかも」 7―1264

西の市は西の京の南、九条あたりにおかれた公設市場。東の市とともに大都市、平城京の暮らしをまかなった大きな市であった。商じこりとは買いそこない、つまり一人でぶらっと市に出て絹を衝動買いしてしまい「これって、失敗だったわ」というもの。今の私たちとそっくり。当時、市で絹が売られていたことを教えてくれる歌でもある。


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