白子駅 美装化プロジェクトの写真 白子駅 美装化プロジェクトの写真

鈴鹿市の協力によって
駅が地域色あふれるものに

住むまち近鉄story

PROJECT 03

白子駅 美装化プロジェクト

担当部署/ 鉄道本部 名古屋統括部 施設部

※部署名などは取材当時のものです

地域に愛される駅を目指し
鈴鹿市へ協働を提案

駅構内の写真

駅の美装化は沿線の各所で進めているのですが、白子駅が他と大きく違うのは、鈴鹿市との協働によって、地域をPRするデザインが取り入れられたことですね。鈴鹿市はF1日本グランプリが開催される鈴鹿サーキットがあるので、国内外の多くの方にモータースポーツのまちとして知られています。また、そのような現代的な側面を持つ一方で、伝統工芸のまちの側面もあり、「さぁ、きっともっと鈴鹿。海あり、山あり、匠の技あり」をキャッチコピーにされているほどです。そこで、鈴鹿市の玄関口である駅として、平成27年から始めていた美装化に地元の特色を伝える役割をプラスできないかと考えました。「地域の魅力を発信することで、より地元の皆さまに愛される駅を目指したい」と、鈴鹿市にプロジェクトについてご相談したところ、協力していただけることになりました。

駅構内の改札の写真

鈴鹿サーキットを中心に他にはない特色を取り入れて

「鈴鹿市ならでは」といった視点で駅の美装化に取り入れる内容を考え、鈴鹿サーキットを中心に伝統工芸の伊勢型紙と鈴鹿墨に絞りました。改札口のファサードは、サーキットコースにある縁石の赤色とチェッカーフラッグをイメージしました。赤色は実際に鈴鹿サーキットまで足を運び、実物と照らし合わせて再現しています。そしてフラッグの柄は、実は通常の市松模様じゃなくて、5マスと4マスを組み合わせた、「いつ(五)の世(四)までも」の意味を持つ沖縄伝統のミンサー柄にして、「末永く白子駅を利用してほしい」という願いを込めました。また、当社の別部署からのアイデアで、ホームの広告用ボードに伊勢型紙の模様を取り入れたことも、統一感の演出にひと役買ってくれました。

駅の西側エリアと東側エリアの
特徴に合わせた展示を考えて

駅構内にある伝統工芸の展示施設の写真

通路の展示は一緒にアイデアを考えつつ、鈴鹿市に実施していただきました。市から関係各所に説明があったことで、多大な協力をいただけることに。駅周辺の特徴に合わせて、鈴鹿サーキットのある西側の通路にはレースの写真などを、そして、伝統工芸の展示施設がある東側の通路には工芸品関連などを展示しています。東側の通路階段にさしかかると見えてくるのが、千有余年の歴史を持つ伊勢型紙の展示です。伊勢型紙は、着物に柄や模様を付けるために使う和紙を加工した紙で、彫刻刀を使って手で彫ります。とても緻密な作業で作品も細かいので、プリントパネルでは伝わらないだろうということになり、実物を設置いただき技術をアピールできることとなりました。また、サーキット写真などは鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドからの提供です。これらも市との協働の賜物です。

伝統工芸士のもとで出会った
迫力ある書道作品をぜひ駅に

駅構内に並ぶ書道作品の写真

そして、東側通路の階段を降りると、墨づくりを紹介している写真パネルが見えてきます。これが、伝統的工芸品として指定されている鈴鹿墨です。勉強のために鈴鹿墨のお店を訪ねたところ、伝統工芸士による書に出会って「これは迫力がある!」と感じ、駅に展示できればいいなと感じていました。今回、市が実施した事業の中で協力いただき、駅名の書道作品が完成しました。実は、駅名を「しらこ」と誤読される場合も多いようです。駅名も正しく知ってほしいと、鈴鹿市とともに考えた結果、「しろこ」と平仮名で書いていただくことに。丸みのある文字なので、可愛らしく親しみをもてる印象になっています。また、墨で描くレーシングマシンのイラストも鈴鹿市が考案され、墨とサーキットのコラボ作品が実現しました。

美装化後も鈴鹿市とつながり
ともに地域の魅力発信に取り組む

鈴鹿墨を連想させるホームの写真

駅の美装化は他にもありまして、ホームなどの柱や待合室を白黒にすることでモータースポーツのイメージを演出し、黒色は艶消し仕上げにすることで鈴鹿墨を連想させる工夫もしています。また、ホームには座り心地のよいレザーベンチを採用し、転落防止対策として線路に対して直角に配置しています。モノクロに赤のアクセントを入れたデザインで、レーシングシートをイメージしました。美装化の完成後も鈴鹿市との取り組みは続いており、令和2年度からは市が開催する「鈴鹿墨書道わぁるどかっぷ」の入賞作品を期間限定で駅に展示しています。市と協働した美装化によって、駅に愛着がわいて、鈴鹿市を離れた方が戻ってきた際に地元の魅力を再認識できるきっかけになれば、と願っています。